高品質のピノ・ノワールをつくることは、簡単なことではありません。ピノ・ノワールは、いろいろな面で栽培が難しいのです。第一に、ピノ・ノワールは、他の葡萄品種以上に生育場所を選びます。シャルドネは、異なる土壌、異なる気候など、さまざまな環境条件下でも、そこそこ良いワインを造ることができます。しかしピノ・ノワールは、限られた範囲の土壌と天候のもとでしか通用しません。葡萄が居心地の悪い状態で栽培すると、本領が発揮できず、退屈な赤ワインになってしまいがちです。おまけに、収穫量に関しても特殊な品種で、適切な収穫量を少しでも超えて収穫しようとするなら、葡萄(そしてそのワイン)から味わい深さや個性を奪ってしまいます。
セラーでも、ピノ・ノワールは注文の多いパートナーです。非常に優しく扱わなければ、この品種特有の繊細さ、シルキーさ、そして幽玄なアロマがそこなわれ、不格好なワインになってしまいます。
しかし、このような多くの困難があるにもかかわらず、人々は挑戦することをやめようとしません。むしろ、これだけ多くの人が挑戦し、挫折しているのだから、ピノ・ノワールの素晴らしさを再認識することができるというものです。軽やかで複雑なアロマ、絹のような口当たり、恋人のような優しい余韻・・・素晴らしいピノ・ノワールを一度体験すれば、この葡萄が到達できる高みに誰もが納得することでしょう。そして私たちワイン造りは、気まぐれなパートナーの魔法にかかってしまうのです。
こことあるシリーズのピノ・ノワールは、余市に新しく植えられた畑からスタートしました。生産者は、日本の誰よりも多くそして長くピノ・ノワールを栽培している家族経営の木村家です。私たちはこの家族を長い間知っており、彼らの高品質なピノ・ノワール栽培への献身を尊敬しています。この新しい畑は、赤色粘土ローム土壌の西向きの急斜面にあり、葡萄の木は愛情を持って手入れされ、よく熟したピノ・ノワールを適度な量だけ生産しています。セラーでは、ココ・トアル哲学に基づき、葡萄は軽く破砕され、野生酵母で適度な温度で発酵させ、優しくプレスし、古樽で熟成しました。
ビン詰め時にわずかな二酸化硫黄を加える以外は何も加えず、ダメージを与えるような濾過装置の使用も避けて醸造した「こことあるシリーズ2019年ピノ・ノワール」です。A Votre santé! 乾杯!
テクニカル・データ | |
品種: | ピノ・ノワール 100 % |
畑: | 北海道余市郡余市町登町 木村農園 |
収穫: |
2019/11/03〜10 収穫時の糖度(平均)約25.5°Brix 収穫方法:手摘み |
醗酵: | 手除梗95%、全房5%。3週間醸し醗酵を行った。野生酵母による醗酵。 |
熟成: | 古樽で16カ月の熟成。 |
瓶詰: |
無濾過にてビン詰 ビン詰日: 2021/07/26 本数: 4,086本(750ml) アルコール:14.1% 酸度:7.2g/L 残糖:1.7g/L |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
色合いはオレンジがかったルビー色。香りはフランボワーズやレッドチェリーなどの赤い果実に、オレンジピールやトースト、ナツメグ、甘草を感じる。味わいは熟成によるコクと丸みを感じ、キリっとした酸と優しいタンニンが全体を支えている。 |
料理との相性: | ベーコンとルッコラのサラダ、茸のホイル焼き、ポルチーニ茸のリゾット、煮穴子、鮪の漬け、鴨胸肉のロースト オレンジ風味、サムギョプサル、豚バラ肉のミルフィーユ鍋、みたらし団子 |
飲み頃: | 2021~2024年は、フレッシュな果実味のある味わいが続く。2025年からは、熟成により果実の香りが落ち着き、旨味や凝縮感が増していくだろう。 |
2022/05/01
●2019 こことあるシリーズ ピノ・ノワールワイン・データシートPDF(プリントに最適です)