高品質のピノ・ノワールをつくることは、簡単なことではありません。シャルドネは、異なる土壌、異なる気候などさまざまな環境条件下でも、そこそこ良いワインを造ることができます。しかしピノ・ノワールは、限られた範囲の土壌と天候のもとでしか通用しません。葡萄が居心地の悪い状態で育つと本領が発揮できず、退屈な赤ワインになってしまいがちです。おまけに、適切な収穫量を少しでも超えて収穫しようとするものなら、葡萄(そしてそのワイン)から味わい深さや個性を奪ってしまいます。
セラーでも、ピノ・ノワールは注文の多いパートナーです。優しく扱わなければ、この品種特有の繊細さ、シルキーさ、そして幽玄なアロマがそこなわれ、不格好なワインになってしまいます。
しかし、多くの困難があるにもかかわらず、人々はピノ・ノワールの栽培に挑戦しようとしています。むしろこれだけ多くの人が挑戦し、挫折しているのだから、ピノ・ノワールの素晴らしさを再認識できるというものです。軽やかで複雑なアロマ、絹のような口当たり、恋人のような優しい余韻・・・素晴らしいピノ・ノワールを一度体験すれば、この葡萄が到達できる高みに誰もが納得することでしょう。
この「こことあるシリーズ2020ピノ・ノワール」は、余市の新しい畑からスタートしました。生産者は、日本の誰よりも多くそして長く、高品質のピノ・ノワールを栽培している木村さん一家です。木村農園の新しい畑は、赤色粘土ローム土壌の西向きの急斜面にあり、葡萄の木は愛情を持って手入れされ、よく熟したピノ・ノワールを適度な量だけ生産しています。私たちは長い知り合いであるこの家族のピノ・ノワール栽培への献身をとても尊敬しています。
セラーでは、こことある哲学に基づき、葡萄を手作業で選果し、野生酵母で適度な温度で醗酵。優しくプレスし、古樽と新樽で熟成しました。ビン詰め時にわずかな亜硫酸塩を加える以外は何も加えず、ダメージを与えるような濾過装置の使用も避けて醸造しました。A Votre santé! 乾杯!
テクニカル・データ | |
品種: | ピノ・ノワール 100 % |
畑: | 北海道余市郡余市町登町 木村農園 |
収穫: | 2020/11/4~13 収穫方法:手摘み |
醗酵: | 手作業での選果。除梗80%、全房20%。中程度の温度(23℃)で野生酵母で醗酵。醗酵期間は平均2.5週間、定期的に穏やかなポンプオーバーを行う。 |
熟成: | ステンレスタンクで圧搾、沈殿。 フレンチオークの古樽80%と新樽20%で14カ月間樽熟成。 |
瓶詰: | 澱引き、ブレンド、少量の亜硫酸塩添加(30ppm未満)後、無清澄・無濾過にてビン詰。 ビン詰日: 2022/8/15 本数: 4,226本(750ml) アルコール:12.1% 酸度:8.7g/L 残糖:2.8g/L |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
色合いはラズベリーレッド。香りはフランボワーズやレッドチェリーなどの赤い果実に、バラの花やナツメグ、トースト、腐葉土を複雑に感じる。口あたりは滑らかで、キリっとした酸と華やかな果実味が溶け合い、ほのかなタンニンとリッチなアルコールにより余韻を長く感じる。 |
料理との相性: | イチゴとブラータチーズのサラダ、茸のホイル焼き、鶏レバーの甘辛煮、ズワイガニの甲羅味噌焼き、煮穴子、鴨胸肉のロースト ブルーベリーソース、手羽元と里芋の煮付け、サムギョプサル、松茸の土瓶蒸し |
飲み頃: | 2023年から2026年は、フレッシュな果実味のある味わいが続く。2027年からは熟成により果実の香りが落ち着き、旨味や凝縮感が増していくだろう。 |
2022/12/14
●2020 こことあるシリーズ ピノ・ノワールワイン・データシートPDF(プリントに最適です)