気候変動に負けない適地適品種のワイン用葡萄をつくるために、20世紀から21世紀にかけて私たちは世界各地のワイン産地を訪れました。そしてフランスの南西部ピレネー山脈の麓で驚くほどの凝縮感と余韻の長さを持つプティ・マンサンに出会うことができました。足利では酸味が適度に残りバランスのとれた白ワインになるのではないだろうかと私たちはプティ・マンサンの栽培をはじめました。
この「こころみシリーズ 2018プティ・マンサンF.O.S.」は、1950年代に開墾されたこころみ学園の葡萄畑の下段に、2006年に植えられたプティ・マンサンからつくられました。プティ・マンサンは粒が小さく、ワイン用葡萄の中でも果皮が占める割合が多い品種です。そこで、この葡萄をすぐに圧搾しないで、赤ワインのように果皮の成分を生かしてみたら別の魅力が引き出されるかもしれない、そう考えプティ・マンサンを果皮と一緒に醗酵してみることにしました。オレンジワインとしてご評価いただくようになった甲州F.O.S.(Fermented on Skins)をつくってきた経験もこのこころみを後押ししました。また醗酵はクヴェヴリのような大きな甕(かめ)で、野生酵母で行いました。この大甕は栽培スタッフの友人による益子焼の特製です。プティ・マンサンの栽培と、醸し醗酵のF.O.S.と、益子焼の大甕のなかでの醗酵・・・三つのこころみをお楽しみいただければ幸いです。
テクニカル・データ | |
品種: | プティ・マンサン 100% |
畑: | 栃木県足利市田島 こころみ学園 |
収穫: |
2018/09/06, 07, 18
収穫時の糖度(平均):約22ーBrix |
醗酵: | 赤ワインと同じように葡萄を除梗し、ステンレスタンクまたは甕に入れ、果皮の様子を見てピジャージュしながら約1カ月間醸す。醗酵により生じたアルコールによって果皮から成分が抽出された事を確認しプレス。その後、小樽に移し野生乳酸菌によるMLF(マロラクティック醗酵)を促す。 |
熟成: | 醗酵終了後、樽で約14カ月半熟成。 |
瓶詰: |
澱引き後、清澄せず無濾過でビン詰。 ビン詰日:2019/12/26 本数:873本(750ml) アルコール:12.3% 酸度:0.57 g/100 ml. 残糖:0.15% |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
色合いはかすかに曇りのあるトパーズ色、ドライアプリコット、黄桃、マンダリンオレンジなど熟した果実とカモミール、ローリエ、生姜やキンモクセイの香りにヨードや蜜ろうのニュアンス、旨味、塩味に加えしっかりと溶け込んだ豊富な酸が渋みを含んだタンニンを包み込み複雑でスモーキーな余韻がゆっくりと広がっていく。 |
料理との相性: | ホワイトマッシュルームのサラダ、きんぴらごぼう、センマイ刺し、鮎のコンフィ、ホタルイカとそら豆のアヒージョ、トリッパのカツレツ、ジャークチキン、モロッコ風クスクス、ポレンタ、イカ墨のパエリア、雷おこし、ヌガーグラッセ、フロランタン |
飲み頃: |
2020~2022年 フレッシュな味わいが続く。 2023~2028年 熟成によりタンニンがなじみ、味わいにより一体感が出る。 保存状態が良ければ10年以上の長期熟成も可能。温度によって香りの変化も大きいので10℃から16℃で楽しんでいただきたい。 |
2020/04/20
●2018 プティ・マンサンF.O.S.ワイン・データシートPDF(プリントに最適です)