こういうわけで・・・
「ロゼはどう?」
ちゃんとその言葉は聞こえていたけれど、知らんふりをすることにした。忙しすぎて(もしくはそう思い込んでいて)、立ち止まって考える暇がなかったのだ。けれど、その言葉は数秒後には戻ってきた...
「ロゼよ、ロゼ」
この、あまりうれしくない議題の矛先を転じたくて、僕は断固として応じた。
「だめだよ。日本全国でもピノノワールでは一番っていうぐらいの畑から来た君は、すごく高価くついてるんだからね。君は赤ワインになることになってるんだ。」
僕が言ったことは確かに否定しがたい事実ではあったけれど、そのブドウにはきれいなイチゴとフローラルな風味、生き生きとした軽快な口当たり、そして程よくスパイスが感じられる後味があった。まるで、僕の心の内と、弱まりつつある決心とを読んだかのように、またその声は戻ってきた。「ロゼにしてよ。自分だって、本当はそうしたいくせに。」がけっぷちに追い込まれて、僕はそれでも弱々しく抗議した。「誰もロゼなんか買わないよ。赤でも白でもなくて、みんなロゼってワインがあることも忘れてるさ。」
「何バカなこと言ってるの。」とその声は答えた。「私たちロゼワインは、ちゃんとした作り方をしさえすれば、白、赤両方のいい所取りだってこと分かっているでしょ。赤のように辛口で複雑、しかもたいがいの白のように軽やかでエレガント。それに、本当にいろんな食べ物との相性がいいのよ!!」
戦いは終わった。僕たちは照準を合わせなおし、ピノノワールのドライロゼ作りに着手した。丁寧な圧搾、古いフレンチオークの樽とステンレスのタンクでの野生酵母による発酵を経て、力強く香りつつ、絶妙に軽快で元気いっぱいのワインが出来上がった。そして、ぶどうが言った通り、本当にいろいろなタイプの食事とよく合うワインに仕上がった。A Votre santé(乾杯)!
テクニカル・データ | |
品種: | ピノノワール 100% |
畑: | 北海道余市町登、木村農園100% |
収穫: | 2014/10/14 |
醗酵: |
葡萄を選別した後、7週間低温全房のカルボニックマセレーション(炭酸ガス浸漬)を行った。 その後、足で破砕して4日間野生酵母により醸し醗酵。じっくりと搾って、タンクに移動した。一夜常温沈殿後、オリ引き。ステンレスタンク(6割)、古樽(4割、8年目のフレンチオーク)にて野生乳酸菌によるMLF(マロラクティック発酵)を行った。醗酵後数か月オリ漬け。 |
瓶詰: |
オリ引き、ブレンド、少量の亜流酸塩添加後、無清澄剤・無濾過にて瓶詰め 瓶詰日: 2015/09/19 本数: 2,345本(750ml) アルコール: 12.0 % 酸度: 0.68 g/100 ml. 残糖: 0.23 % |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
「こことあるシリーズ2014ぴのろぜ」の特徴はイチゴ、シナモン、腐葉土、フランボワーズ、ブラッドオレンジやコーヒーなどの上品なアロマ。やわらかでドライな口当たり。ロゼとしてはボリューム感あり。 |
料理との相性: | 濃縮感があって上品なロゼなので大抵のものと美味しくいただける。あまり熟成していないゴートチーズや、川魚の塩焼き、マグロどんぶり、パテなどが特におすすめ。 |
飲み頃: | 今すぐに飲んでも、2,3年待っても楽しめる。 |
2015/10/29
●2014 こことあるシリーズ ぴのろぜワイン・データシートPDF(プリントに適しています)