白ワインが白いことは、みんなの“共通の認識”です。白ワインが、赤ワインよりボディーが軽くタンニンが少ないということも。白ワインを買う時にも、つくる時にも軽やかでフルーティーな白ワインはひとつの基準でした。
しかし私たちは、世界中のワイン産地を訪れる旅の間に、茜色の滋味深いワインに巡り会うことができました。
イタリアのフリウリ・ヴェネツイア・ジューリア州のオスラヴィエやフランスのジュラ地方の生産者がつくる、果実味にあふれ、アクセントに渋みもあり、複雑でナチュラルな美味しさを持つオレンジ色のワイン。適地適品種の葡萄を探す旅は、その土地の葡萄がその個性を思う存分に発揮するワインを目の当たりにする旅でもありました。
私たちは、今までの淡くやわらかな白ワインとは正反対のワインに挑戦したくなりました。可能な限り葡萄から香りと成分を抽出し、赤ワインをつくるように醗酵させた甲州種のワイン。ちなみにF.O.S.とはFermented on Skins(果皮の上で醗酵)の略です。甲州種の白ワインは日本国内に多く流通していますが、そのほとんどが淡い色で、軽く飲みやすいものです。それゆえ葡萄自体も同じように、淡い色でソフトな味だと思いがちですが、実は甲州種の葡萄は渋味が強くとても力強いのです。このような葡萄からやわらかなワインをつくるには、葡萄の成分を抽出しすぎない注意、成分を抽出しすぎた場合はそれを取り除く技術が必要で、本来の葡萄の特徴や力強さをもつワインにはなかなかなりづらいのです。
2004年、甲州種を果皮と一緒に醗酵させたこの“常識破り”の白ワインは、優れた契約栽培家との信頼関係を元に、毎年、試行錯誤を繰り返しながらつくられるようになりました。最近では自然派のワイン愛好家の方たちから「フォス」という愛称で呼んでいただいています。「2012甲州F.O.S.」は、深い色、広がりのある複雑なアロマ、渋味がつくる口当たりの強さを有するワインで、多くの中華料理に好相性です。
ようやくこのようなオレンジ色のワインが日本でも時折見られるようになってきましたが、保守的な方、オーソドックスなワインがお好みの方には、白ワインなのに渋みがあり、ギャップを感じられるようで、贈答品としては少々心配です。できれば気の合う方とのんびりお楽しみくださいますように。
テクニカル・データ | |
品種: | 甲州100% |
畑: | 山梨県勝沼(秋玉園) |
収穫: | 2012/10/30,11/1 収穫時の糖度:18.3 °Brix(平均) |
醗酵: |
2つの方法で野生酵母で醗酵させ、それぞれで補糖した。 1つ目は、葡萄を除梗しステンレスタンクに入れ、1日2回ピジュアージュしながら醸す。醗酵により出てきたアルコールが皮からの成分を抽出した後、プレス。 2つ目は、タンク内の葡萄のうち45%が全房の仕込、醗酵が始まったら少しずつ葡萄をつぶしていった。約20日の醗酵後、プレス。 |
熟成: | ステンレスタンクで13ヶ月熟成。オリ引き後、清澄せず無ろ過でビン詰。 |
ビン詰: |
ビン詰日:2014/1/15 本数:2,250本(750ml) アルコール: 11.5% 酸度: 0.475g/100 ml. 残糖: 0.125% |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
「2012甲州F.O.S.」は琥珀色。アプリコット、八朔、オレンジの皮のような柑橘系の香りとドライフルーツ、蜂蜜のような香りもある。口中はやわらかい渋みと、オレンジなどのフレッシュなが感じられ、旨みがあり奥深い味わい。ソフトな渋味を伴う長い余韻にも豊かなフルーツが感じられる。 |
料理との相性: | 串カツ、ネギ焼き、チーズとチキンの包み揚げ、鮎の春巻き、小籠包、東坡肉(トーロンポー)、ブーダンノワール レバーペースト甘夏ジャムを添えて カラスミ大根 |
飲み頃: | 現在から2024年頃まで:今でも美味しいが、長期の熟成によりもっと複雑なワインとなるでしょう。 |
2016/06/09
●2012 甲州F.O.Sワイン・データシートPDF(プリントに適しています)