高品質のピノ・ノワールを育てるにはあらゆる点で困難が伴います。シャルドネとちがって、ピノ・ノワールは限られた種類の土壌や気候においてのみ本領を発揮し、適切な収穫量をこえて少しでも多く取ろうものなら、葡萄(そしてそのワイン)から繊細な味わい深さや個性を奪いさってしまいます。セラーにおいてもピノ・ノワールは実に注文の多いパートナーです。偉大なピノ・ノワールを造るべく数多の挑戦がなされ、多くの失敗と挫折がもたらされました。しかし、素晴らしいピノ・ノワールの実現は、舞うような軽やかさ、複雑なアロマ、穏やかでシルキーな口当たり、官能的ともいえる魅力で、我々愚かなワインメーカーたちを虜にしていくのです。
「こことあるシリーズ 2016ピノ・ノワール」は、日本で他に類のないほど長い間ピノ・ノワールを育ててきた余市の木村さんご家族が育ててくれました。私たちはご家族の献身的なまでの努力に尊敬の念を抱いています。2016年は湿度が高く、不安定な曇りがちの秋で、とても難しい年でした。畑でもワイナリーでも細心の注意を払って選果し、優しく潰し、穏やかな温度で野生酵母により醗酵させました。マロラクティック醗酵も野生乳酸菌によるものです。軽いプレスの後は古い小樽で熟成させました。ビン詰時のごく僅かな亜硫酸の添加を除き、何も加えず、清澄もろ過も行っていません。初のこころみであった2014年が、しっかりしたボディと果実味が前面に出た一方で、2度目のこの2016年は明るく、軽やかで、とてもアロマティックなスタイルとなりました。
自然そのままのような赤ワインです。本来の味わいを待って、ゆっくりとお楽しみいただけると嬉しいです。
※こことあるシリーズは、北海道岩見沢市の10R(とある)ワイナリーと栃木県足利市のココ・ファーム・ワイナリーのコラボレーションによって生まれた“美味しい適地適品種”のワインです。
テクニカル・データ | |
品種: | ピノ・ノワール 100% |
畑: | 北海道余市 木村農園 |
収穫: |
2016/11/1, 2, 3 収穫時の糖度 約21.5°Brix(平均) |
醗酵: | 葡萄を選別した後、3割は除梗、残り7割は全房でステンレスタンクに入れ、21日間醸し醗酵を行った。野生酵母による醗酵後、野生乳酸菌によりMLF(マロラクティック醗酵)を行った。低圧で搾り、一夜常温沈殿後にオリ引きした。 |
熟成: | 古樽 (6年目のフレンチオーク)で14ヶ月の熟成。 |
瓶詰: |
オリ引き、ブレンド、少量の亜流酸塩添加後、無清澄・無濾過にてビン詰 ビン詰日: 2018/5/9 本数: 2,734本(750ml) アルコール: 11.3% 酸度: 0.82 g/100 ml. 残糖: 0.19% |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
落ち着いた、やや淡い色調のガーネット。ざくろ、アセロラ、チェリー、鉄っぽさ、香木、燻製したベーコンのようなスモーキーさ、少しハーブのようなニュアンスもある。口中は、ブラッドオレンジ、ローズヒップ、サワーチェリーが前面に感じられる。しっかりしたストラクチャーを感じる酸味により、余韻まで活き活きした味わいが続く。 |
料理との相性: | 程よい旨みがあって上品な赤なので、クラシックなマリアージュをお勧めする。鴨胸肉のロースト オレンジ風味、ローストポーク オリーブ添え、ベーコンオイルをかけたルッコラのサラダ、豚バラと玉葱のバルサミコ風味炒め、鮪のカルパッチョ和風ソース、白カビのチーズや軽めのウォッシュチーズ |
飲み頃: | すぐに楽しみたいなら、4時間前に栓を抜き、デキャンタすることをおすすめする。いい状態で、3~5年熟成させると、本来の味わいが出てくるだろう。 |
2018/05/23
●2016 こことあるシリーズ ピノ・ノワールワイン・データシートPDF(プリントに最適です)