高品質のピノ・ノワールをつくることは容易ではありません。第一に力を発揮する土地を他の品種以上に”選り好み”します。シャルドネは異なる土壌、異なる気候であっても、大概の土地でまずまず良いワインを造ることができます。しかしピノ・ノワールは限られた種類の土壌・気候においてのみ本領を発揮。また適切な収穫量を少しでも超えて採ろうものなら、葡萄(そしてそのワイン)から味わい深さや個性を奪ってしまいます。セラーにおいてもピノ・ノワールは注文の多いパートナーで、とても丁寧に扱うことを要求されます。偉大なピノ・ノワールを造るべく数多の挑戦がなされ、数多の失敗と挫折がもたらされました。しかし実現した暁には軽やかに舞うようなそれでいて複雑なアロマ、穏やかでシルキーな口当たり、官能的ともいえる魅力が、ピノ・ノワールが到達できる高みを確信させるのです。
2018年はローラーコースターのような年でした。春先は雨が降り続き、開花中はずっと冷涼な気候が続き、とても小ぶりな房になってしまいました。さらにいくつもの台風が北海道を直撃したせいで、8月の終わりまで、湿気が高い状態が続きました。それはまるで、今年は壊滅的な年だろうと思わせるのに、十分な条件がつぎつぎにおそってくるようでした。しかし、秋になると急に上向きの温暖で乾燥した天候になり、それによって十分に熟した最適な葡萄をもたらしてくれることとなりました。こうして2018年の北海道の赤ワインは、典型的な冷涼な気候のもたらす赤いフルーツという特徴とは対照的に、格別なバランスと熟した黒いフルーツのキャラクターを兼ね備えたものとなりました。
テクニカル・データ | |
品種: | ピノ・ノワール 100 % |
畑: | 北海道余市郡余市町登町 木村農園 |
収穫: |
2018/10/23~11/3 収穫時の糖度(平均)約22.9ーBrix |
醗酵: | 葡萄を選別した後、全て除梗してステンレスタンクに入れ、18日間醸し醗酵を行った。野生酵母による醗酵後、野生乳酸菌によりMLF(マロラクティック醗酵)を行った。低圧で搾り、一夜常温で沈殿後に澱引きした。 |
熟成: | 古樽9割と新樽1割のミックスで16カ月の熟成。 |
瓶詰: |
澱引き、ブレンド、少量の亜流酸塩添加後、無清澄・無濾過にてビン詰。 ビン詰日: 2020/04/21 本数: 4,217本(750ml) アルコール: 12.6 % 酸度: 0.73 g/100 ml. 残糖: 0.19 % |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
ダークチェリー、レッドプラムなど熟した果実に加え、イチジク、ピンクペッパー、アスファルト、トースト、燻製肉、薔薇、鬼灯など様々な香りが複雑に絡む。口当たりは上品でスモーキーさと細かい豊富な酸を感じ、溶け込んだ滑らかなタンニンが、心地よい渋みと共に長い余韻へとつながっていく。 |
料理との相性: | ベーコンとルッコラのサラダ、鮪のカルパッチョ、ポルチーニ茸のリゾット、煮穴子、オマール海老のテルミドール、鴨胸肉のロースト オレンジ風味、チキンの照り焼き、ローストポークのクリームソース、ヴァランセ、エポワス、シャウルス |
飲み頃: |
2020年~2024年 ストイックなワインで口に含むと完熟したフルーツが感じられる。今からでも楽しむことができる。 2025年~ 熟成により複雑性と持続性が増していく。理想としては5~7年経ってから飲むことをお勧めする。 |
2020/07/01
●2018 こことあるシリーズ ピノ・ノワールワイン・データシートPDF(プリントに最適です)