1929年にドイツで、トロリンガー(スキアーヴァ・グロッサ)とリースリングの交配により誕生したケルナー種は1969年にやっと公認されましたが、今では現代ドイツの葡萄交配の大傑作と言われています。品種名は、19世紀にグラス1杯のワインを自然の薬として飲むよう勧めたヴュルテンベルグの医者で、酒宴の歌の作家でもあるJustinus Kerner氏にちなんだもの。現在はドイツをはじめオーストリアやイタリア、スイスまたイギリスやカナダ等でも栽培されています。そして日本の北海道※です。私たちはケルナーが持つ、華やかな香り、みずみずしい酸、豊かなフルーツに魅力を感じ、余市の契約栽培農家さんに栽培をお願いするようになりました。(※農林水産省2014年統計:57.3ヘクタール)
2020年、余市の藤澤さんの葡萄畑からは豊かな香りと酸を持つ素晴らしいケルナーが収穫できました。このケルナーの果実の力を逃がさないよう、足利の醸造場では15℃から22℃で、野生酵母で醗酵させ、フレッシュさを維持するためにステンレスタンクを主体に約5カ月間熟成しました。
「2020月を待つ」は、果実味豊かで凛とした酸を持つきれいな味わいの白ワインです。ワインの名前の由来は「出る月を待つべし、散る花を追うことなかれ」という江戸時代の中根東里の言葉から名付けました。この清貧の儒学者が佐野にひらいた村塾の壁書にこの言葉があったそうです。(磯田道史著「日本人の叡智」新潮新書) そういえば、“Here Comes The Moon ほら、月が顔を出すよ”という名曲もありました。さあ、お月さまと一緒に、この自然のエレガンスをゆっくりと楽しみましょう。
テクニカル・データ | |
品種: |
ケルナー 86% ソーヴィニョン・ブラン 9% ゲヴュルツトラミナー 5% |
畑: |
北海道余市 藤澤農園(ケルナー、ソーヴィニョン・ブラン、ゲヴュルツトラミナー) 北海道余市 相馬農園(ゲヴュルツトラミナー) |
収穫: |
2020/10/27,31, 11/3(ケルナー) 2020/10/7(ソーヴィニョン・ブラン) 2020/10/1, 7(ゲヴュルツトラミナー) 収穫時の糖度(平均)約21.4°Brix 収穫方法:手摘み |
醗酵: | 葡萄を選果した後やさしくプレスした果汁をステンレスタンクに入れ、約15~22℃の温度で野生酵母によって約1カ月醗酵させた。 |
熟成: | ケルナーはステンレスタンクまたは木樽で約5カ月半熟成。その他はステンレスタンクで約6カ月半熟成。 |
瓶詰: |
澱引き後、濾過を行いながらビン詰。 ビン詰日:2021/06/02 本数:6,340本(750ml) アルコール:12.0% 酸度:5.2 g/L. 残糖:5.9g/L. |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
香りはグレープフルーツやすだちの果実に加え、はちみつレモンやマヨネーズ、ヨーグルト、火打石などを複雑に感じる。口当たりは柔らかな甘みにキリっとした酸と微かな香ばしさが全体を支え、複雑で長い余韻を感じる。 |
料理との相性: | よだれ鶏、あん肝ポン酢、スフレオムレツ、桃とブラッターチーズのカプレーゼ、パクチーサラダ、韓国チヂミ、舞茸の天ぷら、鮎の塩焼き、蕪の蟹あんかけ、ジャークチキン、麻婆豆腐 |
飲み頃: | 2021年~2024年は、フレッシュな果実味のある味わいが続く。2025年からは、熟成によりオイリーさと香ばしさがでてくるだろう。 |
2021/08/16
●2020 月を待つワイン・データシートPDF(プリントに最適です)