“こころみシリーズ”は可能な限りベストなワインを造ろうという私たちの新しい試みです。異なる畑や異なる種類の様々な葡萄を使用したこの限定プログラム。毎年造るレギュラーのワインとは別に、やってみなければわからないことをやってみるのがこころみシリーズのテーマでもあります。
今回のこころみシリーズは、北海道余市の藤澤農園に、2011年に新しく植えられたソーヴィニョン・ブランを中心に、ゲヴュルツトラミナー、ピノ・グリの葡萄からできました。敬愛する藤澤さんが、これらの品種を「栽培してみたい」とおっしゃってくださった時は驚きました。私たちは北海道の別のエリアでのこれらの品種の出来具合を見ていましたが、余市では栽培例の少ないこれらの品種を新しくはじめるのはとても勇気のいることですし、はじめてのことにはいろいろな困難が伴うからです。
「2017 雲の時間」は、開花の時期に長く雨が続き葡萄が花振るいをおこして、ほんの少量しか結実しなかったため、収量も例年に比べ激減してしまいました。このほんの少量の葡萄を、余市から足利の醸造場に大切に運び、3種の葡萄を同じタンクに一緒に入れ、ゆっくりと野生酵母で醗酵させました。
余市の藤澤さんの新しいチャレンジから生まれ、愛情たっぷりに育てられたソーヴィニョン・ブラン、ゲヴュルツトラミナー、ピノ・グリ。それぞれに個性豊かで味わい深い葡萄です。まだまだ樹も若く収量も少ないのですが、これらの葡萄とそのワインに大空のような可能性を感じています。
ゆったりと流れる雲を見ているような「こころみシリーズ 雲の時間」。その名前は、萩原朔太郎の散文『四季』(1936年)のなかの「雲を見てゐる自由の時間」という言葉からイメージをいただきました。
テクニカル・データ | |
品種: |
ソーヴィニョン・ブラン 78 % ゲヴュルツトラミナー 11 % ピノ・グリ 11 % |
畑: | 北海道余市郡余市町 登藤澤農園 |
収穫: |
2017/10/18
収穫時の糖度(平均):約22°Brix |
醗酵: | 選果した葡萄を低温で一晩スキンコンタクトした後、プレスした。葡萄の香りを逃がさないようにゆっくりと野生酵母で醗酵。2017年は3品種すべてを1つのタンクで混醸した。 |
熟成: | ステンレスタンクで約13カ月熟成。 |
瓶詰: |
澱引き後、無ろ過・無清澄でビン詰。 ビン詰日:2018/12/20 本数:195本(750ml) アルコール:13.1 % 酸度:0.58 g/100 ml 残糖:0.11 % |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
ライム、ユリの花、洋梨のフレッシュなアロマ、味わいは黄桃のコンポートのような蜜の香りに加え白コショウのホールなどのスパイス、湿った藁など酸化熟成の印象も感じる。口当たりはやわらかく徐々に粘性をともなって豊富な酸とおいしい苦味が口の中に広がる。 |
料理との相性: | アンチョビ入りグリーンオリーブ、サーモンカルパッチョ(ディルを添えて)、青パパイヤのサラダ、ムール貝の白ワイン蒸し、皮付き豚バラ肉の塩あぶり焼き、ベッケオフ(Baeckeoffe)、ヴァイスヴルスト、ブリオッシュ、マンステール |
飲み頃: | 2019年~2022年。2020年頃までは果実の香りが優先だが、その後は熟成により華やかな香りが落ち着き、若い頃には見つけにくかった酸味が現れやすくなる。 |
2019/06/24
●2017 雲の時間ワイン・データシートPDF(プリントに最適です)