高品質のピノ・ノワールをつくることは容易なことではありません。育てるにはあらゆる点で困難が伴います。第一に、力を発揮する土地を他の品種以上に”選り好み”します。シャルドネは異なる土壌、異なる気候であったとしても、大概の土地でまずまず良いワインを作ることができます。しかし、ピノ・ノワールは限られた種類の土壌・気候においてのみ、本領を発揮するのです。”選り好み”に合わない場所で育てた結果は、つまらない弱々しい赤ワインになるだけです。
ピノ・ノワールは収穫量についても”悪名高い”葡萄です。1ヘクタールあたりの適切な収穫量を少しでも多く取ろうものなら、葡萄(そしてそのワイン)から味わい深さ・個性が奪われてしまうのです。セラーにおける仕事も同様で、ピノ・ノワールは注文の多いパートナーです。本当に丁寧に扱うことを要求されます。でなければ上品でシルキーで繊細な葡萄の特徴が壊れ、不格好で粗野なワインが残るだけです。実際に、偉大なピノ・ノワールを作るべく数多の挑戦がなされ、そして失敗と挫折がもたらされました。しかし、実現した暁には、軽やかに舞うような、それでいて複雑なアロマ、穏やかでシルキーな口当たり、官能的ともいえる魅力が、ピノ・ノワールが到達できる高みを確信させるのです。そうして我々愚かなワインメーカー達はこの最も気まぐれなパートナーの虜になっていくのです。
「こことあるシリーズ 2014ピノ・ノワール」は余市の新しい畑の最初のリリースになります。日本で他に 類のない程長きに渡りピノ・ノワールを育ててきた木村さんご家族が育ててくれました。長い付き合いを通して、そのピノ・ノワールの品質を高める献身的なまでの努力に尊敬の念を抱いています。この新しい畑は赤粘土ローム土壌の、西向きのゆるやかな斜面にあります。愛情込めて育てた樹は、適度な量の完熟したピノ・ノワールをもたらしてくれました。
セラーでは、葡萄を軽く潰し、穏やかな温度で野生酵母により醗酵させ、優しくプレスし、木の小樽または小さなステンレスタンクで熟成させました。ビン詰時のごく僅かな亜硫酸の添加を除き何も加えず、ろ過も行っていません。
2014年は夏の後半まで良い気候が続き、葡萄は適切な成熟を容易に得ることができ、深みと芳香がある素晴らしいヴィンテージとなりました。初めてのこころみである「こことあるシリーズ2014ピノ・ノワール」をどうぞお楽しみください。私達はこのようなワインをつくれたことをとても嬉しく思います。
A Votre santé(乾杯)!
テクニカル・データ | |
品種: | ピノ・ノワール 100% |
畑: | 北海道余市町登、木村農園100% |
収穫: | 2014/10/25 |
醗酵: |
葡萄を選別した後、9割は除梗、残り1割は全房でステンレスタンクに入れ、21日間醸し醗酵を行った。野生酵母による醗酵後、野生乳酸菌によりMLF(マロラクティック醗酵)を行った。低圧で搾り、一夜常温沈殿後にオリ引きした。ステンレスタンク(4割)と古樽(6割、4年目のフレンチオーク)で9か月の熟成。 オリ引き、ブレンド、少量の亜流酸塩添加後、無清澄・無濾過にて瓶詰 |
瓶詰: |
瓶詰日: 2015/10/08 本数: 1,813本(750ml) アルコール: 12.5% 酸度: 0.71 g/100 ml. 残糖: 0.23% |
このワインについて | |
テイスティング・ コメント: |
「こことあるシリーズ2014ピノ・ノワール」の特徴はさくらんぼ、プラム、腐葉土、ドライチェリー、コーヒー、クローブなどの上品なアロマ。口当たりは深みがあってやわらかでドライ。フローラルな赤果実、ピンクペッパー様のスパイシーなフレーバーが、ほのかなほろ苦さ・爽やかな酸と一体となり、優しくて長い後味を演出する。 |
料理との相性: |
程良い濃縮感があって上品な赤なのでクラシックなマリアージュをお勧めします。 鴨のロースト ラズペリーコンフィチュール添え、鶏レバーのパテ、口水鶏、 豚フィレ肉の香草グリエ、アスパラベーコン、炙り鮪、焼き鮭、カマンベールチーズ |
飲み頃: | 今すぐに飲んでも、5~7年待っても楽しめる。 |
2015/01/05
●2014 こことあるシリーズ ピノ・ノワールワイン・データシートPDF(プリントに適しています)