十本の桜  春

P1010076 一昔前のある早春のこと。桜の木を乗せたトラックと植木屋さんがココ・ファーム・ワイナリーにやってきました。ワイナリーの地下セラーでお世話になった仮枠(かりわく)大工のみっちゃんが、桜の苗木を10本、植木屋さん付でプレゼントしてくださったのです。葡萄畑の中腹に5本、葡萄畑の麓に5本。互いに呼応するように、またこころみ学園の園生たちがどこにいても桜を楽しめるように、その桜は植えられました。
 「桜はみんなで観られるからなぁ」そういうみっちゃんは、この桜を一度だけ観て帰らぬ人になりました。春ごとに見事な花を咲かせるみっちゃんの桜。
 生前、彼は腕のいい仮枠大工でした。ご存じのように、コンクリートの仮枠は、コンクリートを流し込んでコンクリートが固まるとその役割を終えます。決して表に出ることのない仮枠。そういうものに宿るつつましさ、奥ゆかしさ。みっちゃんの桜は、名もなき(自分の名前さえ書けない)人たちのワインづくりにエールを送るように、今年もみんなを楽しませてくれています。(C)